ホタル烏賊祭り/
山本 聖
やかに微笑みながら
朝靄の中、巡礼者たちは年に一度の祭りを後にする
静かにパンドラの箱を閉じ
乾いて縮みきったホタル烏賊が
いつのまにか
街灯から、木の枝から、家々の軒先から
ぽそり、と落ち
誰も知らぬ間に土になる
土は
一瞬だけ激しくきらきらと青く光り
そしてもとの土色にもどる
ホタル烏賊の夏祭り
年に一度の魂の夜は
こうして終わり忘れ去られる
また来年の
巡礼のときまで
戻る
編
削
Point
(4)