歯科麻酔/壺内モモ子
をつぶって麻酔されるのを待っていると、私の唇にふにゃっとしたやわらかい、少し湿った何かが乗っかるのを感じた。
だんだんとっても気持ちよくなってきて目を開けると、先生の顔がすぐ目の前にあった。
キスされてる・・・。
抵抗しようと思ったが、力が出なくて、そのまま私はケーキのような甘いにおいに包まれて眠りの世界に入った。
「はい、終わりましたよ。お疲れ様でした。」
目を開けて、鏡を見ると虫歯が完全に治っていた。
どんな治療をしたのかまったく覚えていない。
ただ覚えているのは、物凄く気持ちよかったということだけだ。
診察室から出ると、一人の女性が受付にいた。
「なんで私じゃだめなんですかー。」
受付の女性はやさしく微笑んで言った。
「先生にも選ぶ権利はありますからね。」
一人の女性は納得いかない様子で出て行った。
なんだか自分に少しだけ自信がついた気がした。
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