黒猫/松本 涼
空耳のどしゃぶり
ガード下にこだまする
立ち止まる黒猫の
瞳はブラックホール
目が合えば僕は
吸い込まれていく
夜を開く赤のカーテン
その向こうへ黒猫は走り出す
加速度をつけながら
僕を吸い込んだまま
黒猫は走る走る
夜の空を走る
そして黒猫は
空の夜を吸い込む
僕は黒猫の瞳の中で
夜とひとつになる
やがて空から
全ての夜が消える頃
黒猫は緩やかに
スピードを落としながら
吸い込んだ全ての夜と
僕を吐き出して
ガード下に着地する
振り返らず黒猫は去り
そこには空耳もない
もうすぐ僕を洗う
本当のどしゃぶりがやってくる
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