帰巣本能は月に吠える/チェザーレ
木々の間からこぼれ落ちる月
あぁそうだ
あの空へ僕はもう一度帰れる
たしかにあの時そう思ったんだ
乾いた風を湿らせて
どこまでも走る 秋の土を
もう二度と戻れない
月日を想い
空に沈む小さな足音
夜の風に崩れ落ちる闇
あぁそうだ
あの空には失われた思い出たちが
青白くただずんでいる
呼ぶ声に夜が軋む
失われた星たちを
空にとけた花火を
あの日々の残り香を
あの日々はもう空にしかなくて
……空にくらいはあるような気がして
走れなくなると
僕は必死で歩いた
一秒に何億年も進む星を追って
また夜が沈む
静かに とぐろを巻くように
また 夜が沈む
戻る 編 削 Point(5)