無口な少女のうたう放課後/夕凪ここあ
 
内緒よ。

そう言っていつか見たように笑う、
夕暮れに彼女の細い腕、首筋、髪が
溶けていく、それよりも前に
無口な少女の
透明すぎる声、が。

それから、八時十五分
無口な少女に会わなくなった校舎前、
誰も少女の名前を知らないまま
誰も少女の存在を気にしないままに、
無口な少女は。

  誰にも内緒よ。

窓際の机の端っこに書かれた
無口な少女の名前が
時間に削られてく
誰にも知られないままに。

無口な少女、
心地良い自転車のスピードで
何もかも
追い越してしまった
八時十五分、うたわない。

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