無口な少女のうたう放課後/夕凪ここあ
 
今朝、校舎の前で
無口な少女を見た
目が合うと
少しだけ笑って
そのまま自転車の
静かなスピードで
追い越してった、八時十五分。

無口な少女の
名前を知らない、
先生が出席をとっても
無口な少女、
夢を見ていたかのような
憂鬱。

昼休みには本を広げて
教室の一番後ろ
喧騒から切り取られた窓際の席
無口な少女の本の名前が
わかるのに、未だ少女は
名前のないまま。

放課後、
もう誰もいない夕暮れに
うたう少女、
の名前はないまま。

ららら、
と、うたったのか
何か言葉があったかどうかさえ、
夢の中のように曖昧で。

  誰にも内緒
[次のページ]
戻る   Point(15)