その軌道上に/ブルース瀬戸内
あの紙は何でできているの?
あの紙はどうしてペラペラなの?
女の子が矢継ぎ早に聞きます。
紙はずっと沈黙を守るの?
紙は何故崇められるの?
女の子は核心めいたことを聞きます。
紙は誰のものなの?
紙は種々の観念の総体のようなものなの?
だから皆が紙にお祈りしてるの?
女の子は少し疲れてきました。
そして、テーブルに無造作に置かれた
A4サイズの観念の総体に
“うつくしすぎる抽象者”
と書いて
それを紙飛行機にして飛ばして
一回転させました。
私たちの歴史なんて
ひょっとしたらその軌道上に
とっくに描かれているかもしれません。
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