その軌道上に/ブルース瀬戸内
 
あの紙は何でできているの?

あの紙はどうしてペラペラなの?

女の子が矢継ぎ早に聞きます。


紙はずっと沈黙を守るの?

紙は何故崇められるの?

女の子は核心めいたことを聞きます。


紙は誰のものなの?

紙は種々の観念の総体のようなものなの?

だから皆が紙にお祈りしてるの?

女の子は少し疲れてきました。


そして、テーブルに無造作に置かれた

A4サイズの観念の総体に

“うつくしすぎる抽象者”

と書いて

それを紙飛行機にして飛ばして

一回転させました。


私たちの歴史なんて

ひょっとしたらその軌道上に

とっくに描かれているかもしれません。
戻る   Point(3)