その頃/ミゼット
 
1、

ある朝起きたら母さんが
顔を剥がしていた。

止めようとしたけど怖かったから、柱の陰に隠れて見てた。

あちこち痒かったから(かいたら芽が出るわけだけれども)「痒い」に集中しておとなしくしてた。

母さんは顔を剥がす。

剥がして『母さん』じゃなくなった。

エンタスさんになった。


2、

父さんは顔を、つけたり剥がしたりしている。

一緒に身体まで取り替えている。

父さんはゴスムス氏になったり父さんになったり忙しい。(そしてときどき誰も「いなく」なる)


3、

わたしは冷たいお皿を眺めて、温まるのを待った。

腕はどうやらひび割れているみたいだけれど、今日はまだ、案外きれい。

ポプラの樹が切り倒されて、今日も明日も窓の向こうは曇ったままだと思う。

それでもねえ、もう一人わたしを作ったのよ。

こんにちはミゼット、おはよう、コッポラ


4、

写真。

わたしたちは誰もぼやけた身体でこちらを見ている。
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