描いた青の軌跡は/佐野権太
な
ハザードの、明、滅
オレンジに、浮かび、沈む
君が静かにもたれて
雨上がりを深く、吸い込んだ
夜
漏れるラジエーター液の黄緑
オイルの焼けた匂い
通り過ぎるいくつもの
無関心なヘッドライト
―――何てことないさ
強がって、助けを待ち続けた
冬
譲り合う、ジャンパー
譲らない、しりとり
―――こあら、らっこ、こあら、らっこ
ポケットの中の
凍える手を握りしめ
ガチガチ笑った
帰れないふたり
路地裏の旅館
宿帳に同じ名字を並べ
クスクスと小突きあった
塗り壁に背をあずけ
ボロボロと剥がれ落ちるラメを
ただ、見つめていた
君の舌が熱く、熱く絡まって
溶けていった
夜
青いハイ・ウェイ
速すぎた車輪
若すぎた軌跡
どこまでも行けた
どこまでも行けるはずだった
ゆっくり歩くなんてこと
できやしなかった
僕ら
かすれた声で
―――セリカ
と、つぶやけば
君が小さく
頷(うなず)いた気がして
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