吼/蛙の子
 
たのは 
この醜い気持ちが
この愚かな気持ちが

どこかで何かを期待していたのさ。

姫が愛してくれると どこかで期待していたからさ。

だから魔物は会いに行った。
ひっそりひっそり 会いに行った。

不安で 心を握りつぶされ
期待で 心躍らせて
愛する姫君に会いに行く。

張り裂けそうな想いを伝える為に。

魔物は扉に手をかける。


小さな「吼」が闇夜に消える。



それから魔物がどうなったのか

それは誰にも分からない。

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