かたいくちびる/モーヌ。
 


国境には まだ 霜が 降りて いた

ぼくは ひとさしゆびを かかげて

空 いっぱいに 伸ばした

虚空の なか 水の 夜明けの アラベスク

四十雀(しじゅうから)が まどろみを そっと たたいて

来たものを 告げて うたった

ピアニッシモの 音いろは やさし かった

ばらいろに 焼かれて ゆく ものたちを 放擲して

消え去る 運命を たずね ながら

燃えて 生きるものが 身を 尽くしても

亡くなったりは しないよ と

素足で 地を ふみだして いった





季節よ... ぼくは ばらの園 を さまよった
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