断片 「家路へ」/佐藤伊織
 
なにが惑う要素か
寄りかかる重みに耐えて
家路へ

*

見つかるはずのないもの
見つかることを期待しないもの
今日も一日が過ぎた
終わりはない

*

アルコールは何も解決しない
ただ意識を削り
自分を消していく行為
死がこれほど楽であれば
よいのに

*

どこにもないという
両手が触れない世界
誰かはだれでもない
誰かはだれでも良かった
私はたしかに
死に往く人の通行手形であったのだ

*

やがて太陽に似ているけれど
少し違うものが東から昇り
当たり前のように言葉が繰り返され


*

(それは終わるためにあるんだ)
震えたまま蹲っていたら
違うみたいだ
どうもここではないみたいだ

*

捧げるものも持たない
肉体もない
書類鞄が詰まった列車を
靴音が踏みつぶしていく
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