夜明け/MOJO
 
持ちの良い夜明けなら、いままで出会った、いまいましくも滑稽な奴を罵っても許されるかもしれない。
 あの、低学歴だが抜け目がなくて、色々な職種を渡り歩き、今では小さな建築会社でなくてはならない営業マンになったW。
 その小さな会社は、いまでは創業者の息子が社長になり、Wは気弱な二代目から煙たがられている。
 Wの女房はイラン人と駆け落ちしたという。
 Wから直接その話を聞いたことはないが、職人の親方が居酒屋でばらした。
 Wは工事現場の職人からは嫌われるタイプだった。
 しかしWは息子についてはよく語った。
「あいつ、小遣いの殆どを携帯につかっちまうんだよ」
「名前の刺繍を入れたニッ
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