うまれたわけ/砂木
 
昼間だどー
母さんが 声を張り上げて呼ぶ

私は はしごの五段目に上がったまま
はーい と こたえる

もう少しで この枝が終わるからね
小さな蕾を摘んで 大きな花を残す
良い林檎を ならせるためにされる選別

濃い紅色の粒のような蕾
開きかけの 白い花をほどく私の手は
陽差しに 黒く焼かれる

落ちていく 花は 緑の雑草と たんぽぽの中へ
風が 吹いていく さわさわ 枝と 頬を掠めて

はやくこい
父さんが 呼ぶ

はーい と はしごを降りながら
蝶々に 立ち止まりながら

呼ばれた方へ
手招く方へ

想われて 行く


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