通い女/狸亭
 
その昔かららしい
流れ寄る椰子の実さながら流れ来て
赤道近くの見知らぬ国に 敢えて

身を寄せ合い 互いの運命の赤い
糸を まさぐっている老い先短い
萎えた一物を 柔らかい手が包む
するとあら不思議 蘇るメモリアム

シャム湾に浮かぶ島影 月明かり
海の睦言 玉を懐いて罪あり
長い間 通ひ男であったのに
今は 通ひ女をもてなす 根の国

東方の日の出の国は 早衰え
新興のアジアにも 飽食と 飢え
交々に バランスを崩し 恍惚と
不安 二つながら我にあり 焼跡

あれは一体何だったの 丸裸
敗戦の国の 赤裸の心の 垢
何時の間にか 積もり積もって塵の山
七時間も空を飛んで来ても カーマ

洗い晒しの 少しも面白くない
何処にでもある近代国家 食い合い
もう飽きた せめて残り少ない日々を
暮らそうか 御屋敷ならぬ 仮庵(かりいお)


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