ぼくの居場所(ありか)/セイミー
思い出なんか
数えたことがないけれど
きっと淡いパラフィンに包まれて
膨らんだり縮んだりしているのだろう
ちいさなスイッチのような音が
高い屋根から響いたら
誰もが
大きな空の上へ帰っていく
ただそれだけ
少年のころ
石畳のうえに汗を垂らしながら
乾いた喉を夕焼けで削って帰ってきたっけ
あの苦い味
誤ってチャートを噛んでしまったような
淡くて痛い空間の中で
どの日も同じように告げられたおはよう
どの日も同じように告げられたさよならが
年老いていくぼくの頬に引っ掛かっている
水辺に立って
小石を拾う
拾ったら投げる
涙を集め飴色の恋を透かしながら
どこへ流れていくのか
あたたかい指を目尻に押し当て
自分の容積を計ってみる
果てしない空間に
フロッタージュのように拡散して
叫びが消え入る隙間すら見えない
ぼくはどこにいる
まずはカバンの中から
探してみよう
戻る 編 削 Point(4)