板チョコ/松本 卓也
 
在る筈のない痕跡を
見つけた気になる度に
流れる記憶の向こう側で
忘れてた笑顔を思い出す

振り返っても戻らないのは
決して時間だけじゃなくて
僕が君を覚えていて
ふとした瞬間に蘇る記憶を
感慨深く見つめていると

ひょっとしたら君が
戻ってくるんじゃないかって
そんな妄想が浮かんでくるよ

冷凍庫の中の板チョコ
賞味期限はとうに切れていて
捨てれば良いじゃないか
ただそれだけの事なのに

見ている筈なんかないのに
今日も君への詩を詠って
届いている筈なんかないのに
切れた糸を手放せなくて

ショートヘアーが好きだって
僕の言葉を真に受けて

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