推敲/新守山ダダマ
 
私は今、推敲している
これは人生で最も重要な推敲かもしれない
私はとっておきの傑作を書こうとしている
と言ってもそれは詩でもなければ小説でもない
広く世間の人々に読ませようという意志もない
むしろ読まれたくない
ただ一人の人に
何よりも誰よりも大切だと思った一人の人に
私はメールを送ろうとしている
私は慎重に慎重に一字一字を打っていく
これほど表現に気を遣ったことはない
直接会って話す方がこんなに気を遣わなくて済むだろう
でも彼女とはなかなか都合が合わなくて会えないから
私は文字に気持ちをこめる
私はこれからもさまざまなメッセージを詩に託していくつもりだが
好きな人に好きと伝えることが
この世で一番大切なメッセージだと思う
だから私は今、今まで以上に言葉を考える
別に奇をてらうつもりはないけれど
彼女を想うと必要以上に考えてしまう

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