だからあえて、/腰抜け若鶏
実際、一昔前の俺は何も知らないガキだった。
お化けや宇宙人を信じるほど純粋ではなかったけれど、
世の中の善いと悪いにはっきりとした区別があると信じていた。
善い人間は心が綺麗で頭が良くて夢を持っていて努力家で嘘が嫌いで。
悪い人間は心が汚くて愚かで目標なんかなくて怠け者でくだらないことで笑って。
正義に憧れていた。
悪を憎んでいた。
だから俺は他人が、人間が、この世界が憎かった。すべてが愚かに思えた。
ある日、その二つを越えたものに出会った。
そうしたら、あれほど胸の中で燃え盛っていた憧れも憎しみも消えた。
残ったのは選択肢。
お前はどっちを選ぶ?
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