ララパルーザ/Tora
 
けだ
若いカラスミ売りが時々やってきて
老婆のテリトリーを犯す
露出狂の乳房の谷間には札束が埋もれて
老婆が3度まばたきする間には 意気揚々と帰っていくのだが
老婆のつり銭籠が満杯になる日は決してなく
いつものように7本目の街灯の前 ファーストフード店の
割引チケットを手にした行列が 途絶えることも決してないのだ


俺は遠く280km先の郵便局員にも聞こえるように
すう はあ すう

うまか魚ばくれんねぇ!

と叫ぶのだが
やはりつり銭籠は満杯にはならないし
老婆にはもう背びれが生えてしまっている
一瞬ぶるっと背びれが震えたのは確かだ





玄関の扉を開けると
遅かったねと母が俺から魚を受け取る
3畳ほどの台所で腐った魚と泥を煮る母の
両の足に脛は無い




                  

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