吊られた葉っぱ/加藤泰清
てきた。黄、緑、黄、緑、黄、緑、黄、緑、黄、緑、黄、緑、黄と数える行為がうっとおしくなってきた頃、私の頬に二枚、舞い降りた。虫食いがある葉っぱだ。手に取りよく目をやると、小さな虫がひょこり顔を出した。あんなにも遠くの天窓から、この小さな虫は舞い降りたのだ。私の癇に障って、小さな虫は、爪先で千切り飛ばされた。あそこから、未だ吊り下がってる葉っぱ一切れに、幾ら虫が這っているだろう、と考えるとよだれがでる。彼はそれを知っているのか。縛られているようにも見えるのだが。受験勉強の際には、雑念が後を絶たない。オペラグラスから天窓を除くと、葉っぱは聡子だった。私は狂っていない狂っていない狂っていない狂っていない狂っていない・・・・・・五月八日 晴れ 私は勝ったのだ。
四月一日 雨るや
「全て、私の嘘なの」
そう気取った、少し頬を染めた聡子に、
私は安堵の涙を溢し、
生まれたてのあかんぼの様に、
この身を贄し、
いたづらまぎれに聡子のつめをはいだ。
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