至高聖所/山本 聖
 
まで上がってきてはくれないというのだ
至高聖所というものが本当に存在するのならばそれは天井裏にあるのかもしれない彼女の視線は常に私の頭上にあり時に実に細い線を放つ蒼白のサーチライトで私を照らし出しそして話しかけてくる彼女は私に依存し私もまた彼女の依存を望んでいるお互いにお互いの生を覗き見合いながらいつか私たちは同一の存在になるのだろうかという恐怖に苛まれながら
呼吸が止まる寸前ざばりと頭を水槽から解き放つそして後に残ったのは私の鼻の穴から逆流して蒼い水を湛えた水槽の中に本物の珊瑚の赤子のようにぱらぱらと落ちては小石の敷きつめられた水の底へと沈んでゆく私の言葉の断片なのだった
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