脳内生物ミズキちゃん/加藤泰清
にはパソコンを畳んだ彼の姿があった。彼の姿を、俺は初めて目にした。
「…………」
「……んじゃ、ありがとさん」
簡単にお礼を言って、俺は自分の席に戻った。彼の顔は予想通り、ニキビや脂であまりに汚く歪んだ醜悪な顔だった。ただ、あの渇いた音が、頭の中で何度でも鳴り響く。俺はその正体をミズキちゃんであると決め付けた。そのおかげで授業中はよく眠れた。
「…………」
それから数日後に、彼は不登校になった。もう彼ともミズキちゃんとも会うことはなかった。
一五・四・二〇〇六
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