春眠は春を夢見るか/436
 

今日はひどくぼた雪が降っているなあ
と思いながら窓の外を眺めていると
同居人の男が「それは桜吹雪だよ」と
要らぬ忠告をしてきた

だいたいそれが雪であろうと桜であろうと
たいしてかわりはしないのだけれど
いちいち相槌をうつのも面倒になってしまって
もう一度眠ることにした

いくらでも眠れるので
「たしかにあいつの言うとおりもう春が来たのだなあ」
と妙に納得してしまったが
記憶の糸を手繰っていく夢の中ではまだ冬だった

まるで詩的ではないことをもうもうと想像してみても
決してどこにも届かないとあいつが言うのが怖くて
本当に聞こえないように本当に眠ることにした


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