電話してくれりゃよかったのにさぁ/カンチェルスキス
 
懸命何かに耐えてる感じだった。男は墓石一式をひもで縛りつけて背負ってた。リュックみたいにして。何キロぐらいあんのかわからなかった。リュックにしてはえらく重かったと思う。
「ねえ、墓石いる?」
 男は訊いた。胸のポケットに「全国墓石訪問販売協会認定販売士 忠谷吾郎」というバッチがつけてあった。
「いらない」おれは答えた。
「なるほどね。いい答えだ」
 そう言うと、眼科を出て行き、商店街を歩いていった。違法駐輪にひっかかって、こけそうになったが、耐えきった。忠谷吾郎は力強い男だった。足取りはふらついてた。
 で、その後、おれは目玉を覗かれる検査を受けて、目をぱっちり開けてくださいとピンクの
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