海の波の音/狸亭
 
涙したたり
もう生きられないの口舌歌(くぜつうた)

老いらくの未練仮の契り
日と日をつらね三年経った

太陽に溶けてゆく海から
赤い色の永遠がゆれた

はるかな深い海の底から
二つの悲しみが現れた

海の波の襞の後ろから
夜毎死者たちは訪れた

心配そうな母の顔やら
不愉快そうな老父の叱咤

海の波の音を聴きながら
あら皮はみるみる擦り減った

海の波の音を聴きながら
束の間の空白を育む


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