醜い四月に/窪ワタル
過ぎていて
人差し指に似ていないんだね
四月だからかも知れないけれど
後ろ指は指されないよ
よかったね
君は十六年と百六十三日の内
どれくらいちゃんと眠ったんだろう
もう起きたりしないでいいんだよ
手の甲にまだ君のあとが残っている
赤黒くて細くなった君はひりひりとして
ピカソとシャガールと朔太郎ばかり
吸い込んだ身体はもう
世界を捨ててしまった
美しいものにはなれないと
君は知ってた
君が知らなかったのは
十六年と百六十二日
君が描き続けた絵の様に
デッサンには時間が必要だったこと
世界は色を選べない
美しい四月はもう来ない
宙吊りになって揺れながら醜く
空だけは嘘のように美しいので
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