雨に詠えば/松本 卓也
 
国道に面した真新しいホテルで
五回目の夜を寂しく過ごしている
激しい雨音を掻き鳴らす春は
去年よりもずっと冷酷だった

ルームライトに浮かぶ哀れな影
照らされる白髪を何本か引き抜いても
紛れるほど気楽な悩みを抱えていない

今日も待っている言葉がある
明日もきっと待ち続ける声がある
物憂げな佐世保の夜に慣れないまま
聞こえない声に耳を傾けるため
肘をついた姿勢がただ一つの習慣

泣いているような顔で笑いながら
走り行く疎らな車を目で追って
ささやかな暇つぶしで暮れる日は
呟くため息とどちらが早いのだろう

窓から見える明日の姿を想像して
今日と同じ風景しか
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