海岸線の真上にて/まきび
 
青さなど持っていないよ
海を目の前にして
君が言った言葉

君の吸うたばこの煙が
30センチ昇るまもなく風に消され
僕の問いかけの言葉すら
流されてしまった潮の漂着場で
「青さなどもっていない」
そんなことを言って君は
いったいなにを伝えたかったのだろう

海を見たことのない僕に
ほんものを見せてやる
と言った廊下の影が
君自身の魂だったとして
砂浜に座り
たばこを吸っている君の横顔と
ビニールの床に映った横顔とが
あまりにもそっくりだったから
貝を拾うためにうつむく振りをして
笑ってしまったけれど
今から考えてみると僕は
君の中の君こそを
終ぞ見損
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