噴水/大覚アキラ
雨の中の噴水は
なぜこんなに悲しいのだろう
とっくに失くしてしまった何かが
奥歯のあたりで
チリチリと小さな青い炎をあげて
口の中に苦いものが広がっていく
誰のせいでもない
誰のためでもない
ただ
背中から胸の真ん中を撃ち抜くように
悲しみが貫通してゆく
傘をさして行き過ぎる人は
誰もがみな
残像のように儚く
亡霊のように虚ろに
雨の中の噴水を見ようともせず
俯きながら足早に去っていく
とっくに失くしてしまった何かを
思い出さないように
取り返しのつかない悲しみに
捕まらないように
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