雨の群れ/緑茶塵
なっても兄は戻らず、花屋の店番は首をかしげている
ようやく兄が戻ると、店番は早々家に帰り、その時同時に雲行きが又怪しくポツポツと細かな雨が降り出す
またビニール屋根を引き、店を軒先にしまい
ああ、なんと滑稽でせわしのない
雨もまた本降りになって
私は傘を持て、店を出て、兄に差し出すのです
そして兄は「わるいね」と言うのです
「あなたには嫁がいるが、なぜ手伝わせないのか?」
「駅まで向かいに行く約束があってね、その後で家内の知り合いにあったのでその家まで送っていったと言うわけさ」
兄には借りた傘を差しながら、どうも不器用に片づけを始めるのです
「やあ、服屋の調子はどうだろうか?」
「よく儲かっていますよ」
「どうしてそう、味の無いような返事をするのだい?」
「聞かれた事には、きちんと答えているつもりです」
「そうか、もう濡れてしまうから店に戻ったらいい」
「そうか、そうさせてもらいますよ」
じょーらんじょーらん
滝のような雨に、兄は店を閉めたのです
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