ウランのサイにてウワズミフカミ、へ/人間
 
言葉も朽ちる
地平の奥へと
ウランで造ったサイに乗れ

中は狭い
しかし未開の道よりは広い
肌に冷たい
しかし何を腐らす懸念も無い

肋骨の
はめ殺し窓はウランガラス製
焼け付く妖美な緑の裏で
黒焦げ死ぬ太陽を見届けろ

ウランで造ったサイは
どんな生き物より重い
それが奈落の愛だと知れば
何の畏れもありゃしない

鼻先の望遠鏡を覗け
虐殺の村や紛争の町はないか
決して近寄るな
尻尾の顕微鏡を覗け
足跡や糞尿に異常はないか
健康に留意せよ

背中の上には極楽鳥が
行く末を想像して鳴く
一歩
一歩
鳴き声に惑わされず
風の吹き抜ける方角へ
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