愛を歌うな。/夕凪ここあ
朝食は要らない
体と私が切り離されたような
錯覚よりも確かな感覚に
足を捉われながら
歩かなきゃならない
落書きのような歌を聴きながら
心を発しないように気をつける
つぶやいた言葉は何の意味も持たない
私を形どる呪文があったらいい
空虚ばかりが目立ってしまって
手を伸ばした街角から歌
愛を歌うなと
どこかで誰かが泣いた
あれが歌っているのは愛だった
気づけば何か口ずさんでいたが
愛でもなければ言葉もなかった
ただ幼い頃聞いた話のように
曖昧で懐かしい
あんなに好きだったはずなのに
今はもう らららでしか歌えない
それでもひとりごとのように口ずさめば
どこかで私が繋がった気がした
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