サーキュレート:嘆き/竜一郎
 
大きな碇を繋ぐ鎖が海の中
ゆうらゆうらと、たゆたう
船はその上に浮かび
波のまにまに揺れている
そんなところで何をしている
汝(なれ)はなぜ海神の加護を信じぬ
問いは鎖はぶつりと切って
セイレンを象った舳先の像が
ウミネコの鳴き声を模して笑う

「それで?」
船は波に揺られていく
水平線を目指すかのように
それはさながら千鳥足
何を求めてさまようか
幽霊船でもまともに泳ぐ
この海のうえの、はぐれ鳥

「何の話?」
ただの物語だといえば
シェラハザードに笑われるのか
それとも王に気に入られずに
ざんざと鎌の露と消えるか

ペダンチックな装飾画をなす
すべての曖昧なコラージュ
牧神を知らず、ホメロスの嘆きをも
知らない。「べ」言葉が面白いと、
西脇順三郎は笑ったはずなのに
おれは孤独を嘆いている。
垣根からコンニチハと現れる
だれかと花を咲かせたい。
「そっぽをむいたオットセイ」に
挨拶して、振り切られたい。
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