心モノクローム/夕凪ここあ
足りなかった言葉を
埋めるものが見当たらない
思い出を引き合いに出しても
それはもう終わって閉まった言葉
いつか折れてしまった
あの桜の木の枝が
足りない、足りないと 泣いている
モノクローム
目の前は
色づいてきたはずなのに
体の奥でつっかえたまま
何処にも吐き出せない
動けない
まるで幻だったみたいに
はらり はらりと
散ったきり何もない
足元を見れば欠片があるというのに
心は埋まらない 何より
あれはひどく汚れてしまっている
どこからか優しさが吹いた気がした
どこからか淡い色を連れてきた気がした
それでも心に開いてしまった穴に
見え隠れするのは音もない灰ただひとつきり
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