チューキンとクロックムッシューと風の街/はなびーる
 
ビルの狭間の街に
春の突風が吹いている
大通りからひとつ路地を曲がった
小さな扉の店に入ると
物腰のやわらかい店主が迎えてくれる
ランチを注文して
ホルンの形のオブジェや
店主のお気に入りらしい本の棚を眺めていると
「ひと月で三回もチューキンやられちゃってさあ」
常連らしい客の会話がとびこむ
「道路交通法変わるんだって?」
私も先日やられたばかりなので
苦笑いをこらえてしまう


つい一週間前のことだ
交通課の椅子に違反者として座ると
仏のような顔をした男が
「どこに車を止められましたか?」と微笑む
地図に指をさして示すと
奥から出てきた目の鋭い男が
「そ
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