さよなら、風車をまわすもの/たりぽん(大理 奔)
 
風車が
巨きな時計のようだ
三つの針を吹雪にまかせて
早回しで、ゆっくりとまわる

うなっているのは
雪を孕んで吹く北風
だろうか
誘導電流を生み出すコイルの声
それとも
ただの 耳鳴り

空から生まれてくるもののせいで
視界を失ったとき
ひとは言葉も、体温すら奪われるのに
この、地鳴りのような叫び声

  吹雪の中で手を振り続けてみる
  車の灯火が消えていく

吹雪の中で、ひとり見上げる
白い腕を振る、発電風車

  切られるはずの影も今日はできず
  切るはずの刃の影も地上にはない

寂しく、低くうなるのは
雪を孕んで吹く北風、だろうか
それとも
切られていく明日の影だろうか


さようなら、と
届かない声




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