真実の鏡/落合朱美
その夜 女神が降りてきて
真実を映す鏡だと言うから、覗き込んでギョッとした
これは私ではないと訴えたら 女神は笑う
皮膚が剥がれているのは
上っツラだけ善く見せようとしていた所為
歯が浮いているのは
心にもない言葉ばかり発していた所為
取るに足らない才能を鼻にかけてたから
鼻は鍵のように曲がり
人の目ばかり気にしていたから
目は虚ろで焦点が定まらず
これが紛れもない真実の姿だと 女神は言う
そして女神はやおら私の腹を切り裂いた
中から取り出したのは どす黒いぬめやかな塊
ほらごらん。これがおまえの腹黒い証拠だよ。
と、そのままどこか
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