外耳/むらさき
 
胎児に似たその耳は
いつまでも
うずくまったままで
大人しく
聞いている

純粋なんだね

だからだろう

言葉という言葉すべてを
ご丁寧に外耳の
柔らかな軟骨に
滑らせてしまうのは

ひんやりとした
暗い穴へ
消えていった
それらが
行き着く先は
いったい
どこなんだい

君の体の
どの部分に
たどり着くの

ある曜日の後に
ある明け方の後に

そして君が僕を呼んだ後に
君が君になった後に

さえも

微動だにしない
その軟骨に

おそるおそる這わせる
僕の不器用な人差し指


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