四月のバラッド/狸亭
 
ぐれた収穫を手一杯によろよろ
懲りずに神保町の古本屋を歩きまわりつのるいらいら
重い鞄を肩に吊り西新宿の歩道橋からみおろす夜の色

いつも通る小公園の遅咲きの桜がつかのま燃える春
おびただしいフィクションと現世の倶利伽羅
朱の色が一瞬渦巻いて凍りついては消えるのである
すべての書を読んだわけではないが肉体は悲しわが赤裸
欲望の亡霊たちがつきまとうたびに瘠せていくミイラ
いじめられているのは児童たちだけではない迷路
慢性脱出願望だれもかも異世界の方へどこでもいいから
ここからあちらへひとりひとりの色したオートジャイロ

花とともに去って行ったひとをなつかしむ終日(ひもすがら)
ひたすらに酒とおしゃべりの平成版浮世風呂
竹の子づくしの手料理を片っ端からたいらげながら
まぶしいみどりが目にしみてもうおいらめろめろ


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