手のひらから蝶/夕凪ここあ
うたかた
泡となって
消えないよう
輪郭を撫でる
せめて
触っても
壊れない程に
うたかた
私によく似ていた
静寂に
手のひらから
生まれた 蝶
それは うたかた
透明を誇らしげに
透明な光を纏って
夜に溶けていく
ねぇ、生まれたよ
言ってもそこに
ない うたかた
欠けたお月さまを
埋めるように
私の うたかた
消えないで と
辿りついて と
夜明けを
ひとりで
迎える度に
あの うたかたは
泡になってしまったと
錯覚する
度に
静寂に うたかたは
生まれる
私によく似た うたかた
うたかたによく似た 私
せめて
壊れない程の 輪郭を と
うたかた
撫でても 手のひらから 蝶
うたかたの蝶が纏った うたかた
ねぇ、生まれたよ
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