ヒビワレ/よーかん
 
氷がはった広い水たまりの上にいた。

ボクはまだ少年の体をしていた。
浅い水たまりはどこまでも広がっていた。

氷を通して気泡が見えた。
ボクはつま先を軽く押して氷にヒビをつくった。

ヒビが細かい模様をつくる。

足をのばす。
またつま先でヒビをつくる。
ヒビがつながり模様がひろがる。

ゆっくりと歩いて、
大きな円を描きたいと思った。

つま先をのばしてまた軽くおす。
それを繰り返した。

頬の赤い中学生が隣にいる。
カカトでリズムをとっている。
目がくぼんでてやせている。
あたりをキョロキョロと見渡している。

ボクは円を描くのを中断した。
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