歌をうたうピアノ/夕凪ここあ
 
ものでした

少女がうたい
私はただ見ているだけでした
猫が私を引っ掻き
私はただ見ているだけでした
傷ついた私に母親は
気づきもしませんでした
埃にまみれる私を
私はただ見ているだけでした
自力で声も出せない私は
少女の歌声が羨ましく
聞くたびに
空しくなるばかりでした


その内に私は物置部屋へと
この身を移すこととなりました
薄暗い湿った部屋の扉を閉められる
ほんのちょっと前
あの日から少しばかり成長した少女が
簡単な曲を弾いてくれましたが
もう二度と聴くこともないだろう私の声は
すっかり変わり果ててしまっていました
綺麗な歌すらうたえなくなっ
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