私。/夕凪ここあ
また一つ冬を越せました。
抜け殻にも似た心の
切れ端を無理矢理に
つなぎ合わせて
私はわたしを保っていた、
夜。
誰にも救われなかった涙を
すくってくれたあなたが
そっと私の抜け殻の中へと
潜り込んで、溶けてった、
冬。
寒いのは苦手です。
手のひらの小さなぬくもりが
私から千切れて行ってしまうから。
空っぽの指先を繋いでくれるあなた
の指先から私の体へと伝わる、
春。
窓の外に舞う桜のかけらが
いつかのわたしによく似ていて
私は泣きました
が、私の抜け殻はしっかりと
あなたに満たされていました。
さようなら
埋もれていたわたし。
あなたのあたたかさで
私、また一つ冬を越せました。
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