少年のまま/
佐野権太
近道 深緑の匂い
葉のあるうちは跳ね返る枝が優しい
根株に躓きながら桑の実を探した
前歯が赤紫に染まってしまうので
すぐにバレた
バツが悪そうに出した舌も
鮮やかに染まっていた
隣の犬よりも元気だった あの頃
叱られそうなことは
どれもこれも妖しい輝きを放ち
無垢な黒目にくるくると彩りを映した
消えてはいない
消えてはいない
楽しむことにひたすら貪欲だった
あの頃の僕が
いる
ほら いま
走り抜けて
笑った
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