少年のまま/佐野権太
放置された畑 咲き並ぶネギボウズ
バコン バコンと
プラスティックバットを振りぬいては
浅緑を空の彼方に弾き飛ばした
なぜそんなことをするのだと叱られたが
ネギボウズの高さが
ちょうど僕らのストライクゾーンだったから
としか答えようがなかった
ため池のザリガニ釣り 棒きれとタコ糸
ゆるゆると手繰り寄せる
泥水に一瞬浮かび上がり、逃した
アメリカザリガ二のハサミ
僕らは
すっげぇアカかった
すっげぇデカかった
を連発した
地主のカミナリ爺さんに
ため池で遊ぶなと
何度も追い出されたが
ザリガニはみんなのものだというのが
僕らの言い分だった
桑畑の近道
[次のページ]
戻る 編 削 Point(16)