言葉のこと/竜一郎
却して、後後永永無限に
無盗、無乱、安平、活真の世に至らしめんとするのみ。
故に失りを以つて失りを抜きて真道を見(あらわ)すなり。」
安藤昌益については、ハーバート・ノーマン『忘れられた思想家―安藤昌益のこと』を読めば詳しく書いてあるので、そちらを参照していただきたい。
昌益が述べているように、書字には多くの「失(あやま)り」がある。天には上の、地には下のイメージが添加されてしまっている。彼は「天」を「転」、「地」を「定」として、その価値観としての上下に見られることを嫌ったのである。空も海も尊いものだ。ひとがその手で汚してはならないものだ。
書くことは恐ろしいことなのだ。それを知ってもらいたい。一度放たれた言葉は、いくら訂正しようとも、それを聞いたものがあれば取り返しがつかないのだから。書く度に「失り」は生まれようと、その「失り」のなかでしか私たちは書けないのだ。すべてに用心すべし、そして、何者をも侮るべからず。
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