[ 思い出列車 ]/渕崎。
ですから』
ひび割れたスピーカーがそう言うと、
暗かった窓に光が一瞬差し込んで、
車内は光に包まれてピカリと車内を照らします
乗客は不思議と一瞬で理解しました
( 嗚呼、コレが生まれた瞬間か
( コレが、自分の始まりか
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
一両編成の小さなトロッコ列車が
蒸気を噴出し、電線の上を走っています
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
ガタン ゴトン ガタン ゴトン
煤けた窓から見えるのは、
一人ばかりの乗客の、記憶のページばかりです
他愛もない情景が次から次へとフィルムのように流
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