[ 詩 ]/渕崎。
 
わたしが詩を描く時
そこには何も在りはしない


澄んだ青空に浮かぶ白い雲
ぷっかり浮かんだまぁるい真昼の月
春を告げる鳥の囀り
発情期間際の赤ん坊の泣き声のような猫の声
アスファルトを駆ける子供の足音
遠くで犬の吼える声
誰かの歌う旋律の外れた流行歌
ざわりと揺れるのは庭の山桃の木だろうか

けれど、わたしが詩を描く時
そんな全てが消えて、わたしの世界は真っ白になる



わたしが詩を描く時
そこには何も在りはしない


黄昏時に染まったかすみ雲
ゆぅらりと沈むいびつな太陽
日暮れを告げる鴉の鳴き声
発情期間際の猫は活発に動き出し
あちらこちらで母親が幼子の手を引き連れ帰る
何処からともなく聞こえてくるのは
後ろの家のピアノの音色だろうか

しかし、わたしが詩を描く時
そんな全ては消え失せて、わたしの世界は真っ白になる



わたしが詩を描く時、
在るのは、真白な紙と短な鉛筆ただ一本

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