初期詩篇選集「尾行者の音楽」/岡部淳太郎
 
を感じる



誰かの後ろを追い駈けている
俺にとって音楽は スロウ
その旋律を路上にたれ流し
泣きたい気持ちで 俺は歩く



私は誰かに尾けられているのではないだろうか



どうかふりむかないでくれと願いながら
俺は尾行をつづける
気づかれないように まかれないように
俺の音楽はいつも スロウ



やっぱり私は誰かに尾けられている



俺はいつも追い駈けている
わかるか この疲労が
遅れた者だけが聴く音楽は スロウ
街のふところで先導する者と尾行する者 ふたり



先導者と尾行者はいつか
どこかの曲り角でば
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